プレスリリース

プレスリリース 被災地の生活者意識調査 調査結果

2012/01/30
報道関係各位
 

被災地の生活者意識調査 調査結果

 

◆ 震災後、住まいの重要度が高まった 7割半

◆ 「大地震に対しては日頃の防災意識が重要」 9割半、「首都圏直下型地震への対策不足を認識」 9割強

◆ 「10年以内の大地震を予想」 8割半、「数千年単位で過去の大地震の情報分析が必要」 8割強


この度の調査では、2011 年3 月11 日に発生した東日本大震災の被災地(本調査においては、青森県・岩手県・宮城県・福島県・茨城県の5 県としています)に現在も居住し、生活を送っている全回答者(2000 名:男性1,000 名、女性1,000 名)に対しアンケートを行ない、被災地で生活を送る方の生活や防災に関する意識変化を探りました。
まず始めに、全対象者(2,000 名)に対し、《生活スタイルや家族とのコミュニケーションに関する意識》について、項目毎にどの程度あてはまるか質問を行ないました。その結果、特に『あてはまる』(「非常にあてはまる」と「ややあてはまる」の合計、以下同様)との回答が多くなった項目は、【東日本大震災後、「住まい」について重要度が高まった】で、『あてはまる』が76.0%と7 割半、「非常にあてはまる」のみでみても32.8%と3 割強が“住まいの重要度が高まった”と感じている様子が窺えました。
また、【東日本大震災後、外出が減って家の中(自宅)で過ごすことが増えた】の項目では『あてはまらない』(「全くあてはまらない」と「あまりあてはまらない」の合計、以下同様)が60.4%、【東日本大震災後、家族の会話やコミュニケーション量が増えた】では『あてはまる』が56.2%、【東日本大震災後、家族の絆が強くなったと思う】で『あてはまる』が66.4%となりました。この調査結果から、家族と過ごす時間自体が増加したとはいえない状況下にありながらも、家族がお互いに密に連絡を取り合うことで絆が強まり、家族が生活を送る場所である「住まい」の重要度が増している被災地の状況が窺えました。
 

また、《地震や自然災害・防災に関する意識》では【大地震に対しては、日頃の防災意識が重要だと思う】で『あてはまる』が95.4%、「非常にあてはまる」のみでみても69.1%となり、被災地で生活を続ける方の高い防災意識が窺えました。地域別でみると、津波の被害が甚大であった宮城県では「非常にあてはまる」が75.3%となり、他の地域よりも高くなりました。
 

そのほかの《地震や自然災害・防災に関する意識》についても『あてはまる』が8 割以上となり、【首都圏直下型の大地震に対して、日本は対策や準備が不足していると思う】で92.4%、【将来、大地震に襲われることを心配している】で89.2%、【10 年以内に日本に大地震が発生すると思う】で86.7%、【歴史を紐解き、数千年単位で過去の大地震の情報を分析するべきだと思う】で82.5%となりました。将来の大地震に対する危機意識や不安から、国として行う地震対策を充実させることや、大掛かりな地震研究が行われることに期待を寄せている様子が窺えました。
 
 

◆ 「住まいの耐震性や耐震対策は重要」95.2%

◆ 「耐震性の高い住宅について詳しく知らない」 被災地で6割強

◆ 被災地で「省エネ意識高まる」 8割半

◆ 「この冬は節電中」69.0%、「今年の夏は節電予定」83.5%


被災地の暮らしでの生活意識変化を、“住まいの耐震性” と“省エネ・節電” の視点から探りました。

《住まいの耐震性に関する意識》では、【「住まい」において耐震性や耐震対策は重要だと思う】で『あてはまる』が95.2%と、高い意識が窺えました。

ただし、【耐震性が高い戸建て住宅の特徴について詳しく知っている】では『あてはまらない』が62.7%となり、自身の知識量について不安に感じている方が多数派となっており、【家を建てる時は、耐震対策について、勉強しようと思う】では『あてはまる』が86.3%となりました。自身の知識量について満足していない為か、住宅を購入する際には住まいの耐震性について勉強したいと考えているようです。

また、一般的に壁や床など”面”で建物を支える「2×6(ツーバイシックス)工法」などのパネル工法が主流の輸入住宅は、柱や梁などの”軸“で建物を支える在来工法よりも耐震・耐火・耐風性などに優れ、災害に強いとされていますが、【輸入住宅は日本の在来工法に比べて、耐震性で優れているものが多いと思う】では『あてはまる』が35.9%、『あてはまらない』が64.1%となり、多くの方が輸入住宅の耐震性について、誤解をしている実態を窺い知ることができる結果となりました。耐震性の高い戸建て住宅に詳しい方(【耐震性が高い戸建て住宅の特徴について詳しく知っている】の項目で「非常にあてはまる」と回答した223 名)は輸入住宅の評価が高く、『あてはまる』との回答が67.7%となりました。
 

《省エネ・節電に関する意識》では、【東日本大震災後、省エネ意識が強くなったと思う】の項目で『あてはまる』が85.9%となり、深刻な電力不足に見舞われた被災地において、省エネ意識の高まりが窺えました。

また、昨年の夏とこの冬の節電状況を質問すると、【2011 年の夏は節電を実行した】で『あてはまる』が84.7%、【この冬は節電を実行している】が69.0%となり、過半数以上が節電に取り組んでいる状況ですが、この冬は昨年の夏と比べると節電に苦戦している被災地の様子が窺えました。

今年の節電意向としては、【2012 年の夏は節電を実行しようと思う】で『あてはまる』が83.5%、【2012 年は一年を通じて様々な省エネに取り組む予定である】で『あてはまる』が76.7%となりました。厳しい冬の寒さのためか、昨年の夏と比較すると冬の節電が実行できていないという実態が多く見受けられますが、今後も省エネ・節電に積極的に取り組もうとする姿勢が窺えました。
 
 

◆ 住宅選びで重視するポイントは「長寿命」「省エネ」「耐震性」「高断熱」

◆ 結婚することで関心が高まる「ローランニングコスト」

◆ 被災地の住宅購入予備軍は「スマートハウス」に関心

◆ 大震災以降、住宅選びで最も重要性が増したのは「耐震性」


被災地で生活を送っている方は大震災を経験したことで、今後どのような基準で住まいを選択するのでしょうか。

全対象者 (2,000 名)に対し、これからの住宅選びで大切だと思うことを複数回答形式で質問したところ、最も高かったのは「耐久性・長寿命」で79.4%、次いで「節電・省エネ」が77.1%、「耐震性・躯体・工法」が72.5%、「高断熱・高気密によって冬暖かく夏涼しいこと」が71.5%で続きました。被災地で生活を送っている方が住宅選びで大切にしているのは①耐久性が高く、長く居住でき、②節電や省エネに役立ち家計や環境に優しく、③地震に強い住宅、であることがわかりました。

また、既婚者は「湿気対策」(63.7%)や、「結露防止」(60.4%)、「光熱費等のランニングコスト」(57.6%)といった回答が未婚者に比べて10 ポイント以上高く、子どもが3 名以上いる家庭では「開放感」(39.3%)や「素材」(48.1%)、「見た目の美しさ(居住空間)」(45.3%)などが高くなる傾向が見られました。結婚することで維持費用に対する関心が高まるためか、ランニングコストや湿気・結露といった項目に対する意識が向上し、出産によって子どもが増えていくことで、家の素材や居住空間の美しさなど、より住まいの快適さを求める意識が強くなるようです。

また、「節電・省エネ」が上位回答にあがったことに対し、「オール電化」(22.4%)や「電力消費がIT 技術で制御されていること」(25.7%)は下位回答でしたが、住宅購入予定時期を「3 年以内」と回答した住宅購入予備軍(121 名)では、「オール電化」は34.7%、「電力消費がIT 技術で制御されていること」は30.6%と高くなる傾向が見られました。住宅購入予備軍は「節電・省エネ」を達成するための選択肢として、自動で節電が実現できるスマートハウスに関心を寄せている様子が窺えました。
 

次に、全対象者(2,000 名)に対し、これからの住宅選びで東日本大震災発生以降に重要性が最も増したと思うものを単一回答形式にて質問したところ、「耐震性・躯体・工法」が最も高く41.4%となり、次いで「耐久性・長寿命」が18.9%、「太陽光発電システム等の創エネシステム」が9.7%で続きました。地震や停電などの恐怖や困難に直面した被災地では、住まい選びで“災害に強い住宅であること”の重要性が増していることが明らかになりました。
 
 

◆ 復興実感できず 4割強、福島では5割強

◆ 地元で生活を続けたい被災者の気持ちを理解 9割強

◆ 津波で被災した地域は住宅建設を制限すべき 8割強

◆ 消費税増税するなら復興の財源にも 9割弱

◆ 復興で優先すべき課題は「雇用」8割弱、「原発事故の収束・補償・除染」6割半、「住宅」6割

◆ 「心の傷のケア」に対する課題意識で大きな男女差

◆ 働く女性の5割強は「二重ローン救済」を優先課題と認識


それでは、被災地で生活を送っている方は被災地復興についてどのような意識を持っているのでしょうか。

全対象者(2,000 名)に対し、《復興や地元への愛着に関する意識》について、どの程度あてはまるか質問したところ、【被災地復興は、着実に進んでいると思う】では『あてはまる』が57.7%と多数派になりながらも、被災地復興が進んでいないと感じている『あてはまらない』との回答が42.3%と4 割強、「全くあてはまらない」のみでも10.5%と1 割となりました。特に、原子力事故の起こった福島では『あてはまらない』が52.5%となり、今も復興が進んでいないと感じている意見が多数派となりました。

また、【被災地を離れず地元で生活を続けたいという被災者の気持ちが理解できる】では『あてはまる』が91.2%となりましたが、【津波で被災した地域への住宅建設は、将来の大地震発生を考慮して制限した方が良いと思う】では『あてはまる』が81.4%と8 割強になり、地元に留まりたい気持ちを理解しながらも、津波の被害にあった地域の住宅建設に慎重な意見が窺えました。特に、津波による被害が甚大であった岩手県と宮城県では、他の地域に比べて『あてはまる』 (岩手県:87.8%、宮城県:85.7%)を選択した割合が高くなりました。

また、被災地への支援についての項目では、【被災地復興は全国的な協力や支援が欠かせないと思う】では『あてはまる』が96.7%、【将来、消費税増税をした場合、被災地復興のための財源としても利用すべきだと思う】では『あてはまる』が88.1%になるなど、全国的・政治的な支援を期待する意識が高くなりました。
 

続いて、全対象者(2,000 名)に対し、これからの被災地復興において、何が優先すべき課題だと思うかを複数回答形式で質問したところ、「雇用」が78.8%で8 割弱と最も高く、次いで「原発事故の収束や被害補償、放射性物質の除染」が64.0%、「住宅」が60.9%となりました。また、「心の傷のケア」において女性が69.2%と男性(48.6%)よりも高くなり、就業している女性では「被災地の二重ローン救済」が53.0%と高くなりました。
 
 

◆ 「被災児の教育環境整備を急ぐべき」や「被災児へ経済支援すべき」 9割半

◆ 被災地の母親「全国の校舎の耐震性をチェックすべき」97.8%

◆ 被災地で“絆”強まる これからの人生で築きたいことは「温かい家庭」 7割半


被災地の教育環境や被災地で送る将来の生活についての質問を行ないました。

全回答者(2,000 名)に対し、《子どもたちの未来・教育環境に関する意識》について、どの程度あてはまるかを質問したところ、被災児の教育環境整備に関する【被災した家庭の子どもたちの教育環境の整備を急ぐべきだと思う】の項目では、『あてはまる』が96.6%、「非常にあてはまる」のみでみても68.6%となりました。特に、現在被災地で子どもと同居している母親(以下、母親)では、「非常にあてはまる」が74.5%となり、被災児の教育支援に対し、緊急性を感じている様子が窺えました。
 

また、被災児の経済支援に関する【被災した家庭の子どもたちに対する経済的な支援を十分にすべきだと思う】の項目でも強い必要性を感じており、『あてはまる』で96.1%、「非常にあてはまる」が68.1%、(母親では76.0%)となりました。
 

また、母親が最も「非常にあてはまる」と回答した項目は、学校の耐震性に関する【全国の学校の校舎の耐震性をチェックすべきだと思う】で、『あてはまる』と回答した母親が97.8%、「非常にあてはまる」が81.8%となりました。個人的に防災チェックを実施したかを問う項目の【東日本大震災後、「勤務先」や「自分や子どもが通う学校」の防災対策をチェックした】では、『あてはまる』と回答した母親が65.8%となっており、教育機関については個人のチェックに留まらず、建物の耐震診断などが実施されることを望んでいる様子が窺えました。
 

また、【防災意識向上のための教育を学校において十分に実施すべきだと思う】では『あてはまる』が95.4%と9 割半、【子どもたちを放射性物質から守ることは、教育現場において重要だと思う】では『あてはまる』が93.5%となりました。被災地で生活する方の、子どもや子どもの教育に影響は出させまいとする強い思いが窺えました。
 

次に、全回答者(2,000 名)に対し、「これからの人生」において何を築いていくことが大切だと思うかを複数回答形式で質問したところ、「温かい家庭」が74.7%で最も多く、次いで「パートナー(夫・妻、恋人)との信頼関係」が67.5%、「助け合いやボランティア、社会貢献による社会全体の絆や平和」が50.8%となりました。家族や夫婦・恋人などの近しい人との絆をはじめ、社会全体での絆・平和を築いていきたいとする意見が上位回答にあがりました。
 

注:本調査レポートの百分率表示は四捨五入の丸め計算を行っており、合計しても100%とならない場合がございます。

◆調査概要◆

◆調査タイトル:被災地の生活者意識調査
◆調査対象:ネットエイジアリサーチのモバイルモニター会員を母集団とする
青森県・岩手県・宮城県・福島県・茨城県に在住の15歳〜69歳の男女
男性1,000名(15〜19歳:223名、20代:262名、30代:265名、40代以上:250名)、
女性1,000名(15〜19歳:238名、20代:268名、30代:266名、40代以上:228名)
◆調査期間:2012年1月6日〜2012年1月11日
◆調査方法:インターネット調査(モバイルリサーチ)
◆調査地域:青森県・岩手県・宮城県・福島県・茨城県
◆有効回答数:2,000サンプル(有効回答母数から2,000サンプルを抽出)
◆実施機関:ネットエイジア株式会社